空所補充型テストは, 浅い処理の学習方略使用を促進し, 深い処理の学習方略使用を阻害することが指摘されている。本研究では, 学習者が“空所補充型テストには浅い処理の学習方略が有効である”という“テスト形式スキーマ”を持っているために, このような問題が生じると考えた。そして, 実際の歴史の授業場面を用いて,“テスト形式スキーマを変容させる介入を行うと, 客観式テストであっても, 浅い処理の学習方略が促進されない”という予測の検証を行った。具体的には, 中学2年生55人を, テスト形式スキーマに介入するクラス (テスト形式スキーマ+方略介入群) と, 介入しないクラス (方略介入群) の2クラスに分け, 空所補充型テストを実施したときに, 方略がどのように変容するかを検討した。結果, テスト形式スキーマ+方略介入群が, 方略介入群に比べて, 空所補充型テストが実施されたときに, 暗記方略の使用を抑制することが示された。また, 授業ノートへの書き込みも, テスト形式スキーマ + 方略介入群が多くなることが明らかになった。空所補充型テストの予期が学習方略使用に影響を与える背後には,“テスト形式スキーマ”という要因が介在していることが示唆された。