本研究では, 相互教授による概念変容を促す教授方略を開発し, 小学4年生理科の電流概念の授業を用いて, その教授効果を実証的に検討した。授業の議論過程でいかなる概念変容が生じ, その背後にいかなる要因が深く関与しているのかを, 発話事例のカテゴリー分析と解釈的分析の2つの観点から分析した結果, 以下のことが明らかになった。1) 議論過程の導入期では,「予想と理論化」の教授方略により, 課題の状況や自己・他者の理解状態を分析する, という思考活動がもたらされる。2) 展開期では,「発見の要約」の教授方略により, 他者と自己の考え方の差異が明確化され, 認知的葛藤が生成される。3) 終末期では,「証拠と予想・理論の調整」の教授方略により, 統合的な思考が創造され, 認知的葛藤が解消されることで概念変容が促される。また, 相互教授の議論の過程で大きな認知的葛藤が生じ, 議論が行き詰まった場合には,「理論」と「証拠」を整合的に結びつける思考のガイダンスを取り入れる教授方略が概念変容を促進させることが示唆された。