平行四辺形の周長を固定したまま, 角度を変えて変形した場合の面積判断を求める「等周長問題」は平行四辺形の求積公式を適用することによって容易に解決可能であるにもかかわらず, 面積は変化しないという誤判断が多く見られることが知られている。この点に関して, 問題解決時に公式が「不活性」であることだけではなく, 公式に関する知識表象を操作する過程に問題のあることが予想された。そこで, 大学生106名を対象に, 公式使用のヒントのない問題とヒントを加えた問題の解決を求めるとともに, 公式に関する知識操作水準を測定し, 操作水準と問題解決状況との関連を検討した。その結果,(1) ヒントなしで等周長問題を正答できた者の割合は, 高操作群の方が多かった。(2) 低操作群でのヒントの有効性は低く, 単なる活性化では正答に至らなかった。(3) 最終的に正答できなかった者は, 公式を単なる求積手続きとして硬直的に解釈する傾向があった。以上のことから, 概念的知識の適用可能性を検討する上で, 知識表象の操作可能性が重要な要因となることが示唆された。