本論の目的は, 現代青年の自我理想型・超自我型人格の精神的健康の違いについて量的・質的に検討することである。研究1: 大学生 (554名, 平均19.68歳) を対象に質問紙調査を行い, 自我理想型・超自我型人格尺度 (EI-SES; 第1因子「志向性」, 第2因子「べきの専制」[以下「べき」]) と違和感尺度 (現在の自分自身に対する違和感) を作成し, 両尺度の信頼性を確認した。精神的健康の指標 (違和感: 逆転自尊心, 充実感) との相関分析では,「志向性」は正の相関を示し,「べき」はおおむね負の相関を示した。またEI型 (「志向性」高かっ「べき」低) とSE型 (「志向性」高かっ「べき」高) とを比較すると, 精神的健康の指標はEI型がSE型より高かった。研究2: EI-SESの下位尺度得点の高低を基準に面接調査を依頼したところ, 16名の協力を得た。「志向性」および「べき」の日常場面における様相と, 理想がかなわない葛藤場面での反応について面接した。その結果, 尺度の妥当性が確認された。また, 同じく「志向性」が高いEI型とSE型人格の間には, 精神的健康という側面で違い (EI型>SE型) が見られることが示された。