近年の研究では, 目標や動機づけが当事者の意図や自覚の外で活性化し, 行動や判断を先導することが示されている。しかし, その調整要因についてはほとんど検討が進んでいない。本研究では, 学年末テストまでの日数が, 達成プライミング効果に及ぼす影響を検討した。105名の学生は, 達成プライミング群と統制群に無作為配置され, その半数は学年末テスト10日前に, あとの半数はテスト前日に実験に参加した。テスト10日前状況においては, 達成語のプライミングによって動機づけられた参加者は, 中性語をプライミングされた統制群に比べ, 否定感情を低く報告しており, また, 自発的な学習課題により多く取り組んでいた。ところが, テスト1日前に達成語をプライミングされた参加者は, 逆に統制群よりも, 否定感情を強く報告しており, また自発的学習課題への取り組みが少なかった。また, 回避動機やテスト成績の予測においても同様に, 達成プライミングと時点の交互作用効果が見られた。この結果は, 同じ語によるプライミングで生じた達成動機づけであっても, 当事者の置かれる状況によって異なる反応を引き起こすことを示すものであり, 自動動機における状況調整因の重要性を示していると考えられた。