これまでの研究では, 空所補充型テストの予期が暗記型方略の使用を促進し, 意味理解型方略の使用を低下させることが示されてきた。しかし, テスト形式の予期が方略を変容させるメカニズムは明らかばなっていない。本研究は, そのような方略変容メカニズムの検討を目的とした。実験1では, 大学生136人を被験者とし, 暗記型方略が有効な空所補充問題を予期する群, 意味理解型方略が有効な空所補充問題を予期する群, 統制群の学習方略を比較した。結果, 統制群ば比べて, どちらの群も暗記型方略の使用を増加させた。学習者は, テストの課題要求を能動的に分析し, その結果ば基づいて合理的に方略を変容させているわけではないことが示唆された。実験2では, 大学生48人を被験者とし, 難しい空所補充型テストを予期する群 (空所-難群), 易しい空所補充型テストを予期する群 (空所-易群), 統制群の学習方略を比較した。結果, 統制群に比べて, 空所-難群のみ暗記型方略の使用を増加させ, 意味理解型方略の使用を低下させた。また方略帰属の程度と方略変容の間ば, 相関が見られた。学習者の方略変容には, テストに対する困難度の認知と方略帰属という2つの媒介過程が存在することが示唆された。