本研究では, 佐藤 (2001) において因子分析を行うことで見出された音大進学理由因子のうち, 大学における適応感を高める可能性が示された3因子を取り上げ, これらの形成に影響を与える要因について検討することを目的とした。音楽大学の学生を対象に行った調査から, 2年生の女子学生529名のデータを用い, 共分散構造モデルを作成した。「能力活用」「将来展望」「音楽的同一性」という進学理由因子に影響を与える可能性のある要因として, 大学入学以前の音楽経験, 進学に対する家族のサポート, 家庭の音楽環境を取り上げた。進学理由因子への直接的な影響を最も明確に示したのは, 家族のサポートであった。音楽経験の要因から進学理由因子への影響力は小さく, 学生の専攻によつてその影響力に違いも見られた。音楽環境から進学理由因子への影響力は, 家族のサポートを通しての間接的なものであることが示唆された。