本研究の目的は, 幼児の謝罪行動を道具的謝罪と真の謝罪の2種類に分け, 謝罪の種類と親密性との関連を検討することであった。対象児は4歳児 (N=60), 5歳児 (N=65), および6歳児 (N=63) であった。分析の結果, 親密性が謝罪の種類に影響を及ぼすのは6歳児になってからであることが示された。すなわち, 4歳児は, 親密性の高い相手に対しては道具的謝罪を用いるが, 6歳児になると親密性の低い相手には道具的謝罪を, 高い相手には真の謝罪を行うことが明らかとなった。また, 親密性の異なる相手に対して, 幼児は謝罪後の人間関係を考慮した上で謝罪を行っているのか, またその際, どちらの謝罪を用いるかについて検討した。その結果, 4歳児も6歳児も謝罪後の被害者との関係維持を考慮して謝罪を行うが, その際, 4歳児は親密性の高い相手には道具的謝罪を用いるが, 6歳児は親密性の低い相手には道具的謝罪を, 高い相手には真の謝罪を用いることが示された。