子どもを対象とした, 性格特性概念の理解の研究, 対人認知研究, ビッグ・ファイブ研究によると, 子どもは幼稚園年長児頃から性格特性概念を獲得し始め, 小学校高学年にて成人と同様の性格特性/次元概念であるビッグ・ファイブを獲得するようになる。しかしその獲得の発達過程は明らかではない。本研究ではこの発達過程をビッグ・ファイブ仮説に基づき検討した。研究1では, ビッグ・ファイブに基づく性格特性を典型的に示す人物の行動場面を幼児に提示し, 幼児が類似した他の場面での行動予測が可能であるかを検討した。その結果, 5歳児では〈外向性〉〈愛着性〉〈知性〉次元, 6歳児ではそれらに加えて, 〈統制性〉次元の行動画面の予測が可能であった。しかし, 行動予測の際に想起されたイメージを検討した研究2の結果, ほとんどの行動予測では全般的〈良い〉次元が用いられていることが明らかとなった。本研究から, 幼児は幼稚園年長児頃から全般的な〈良い〉次元を内容とした性格特性の概念を獲得し, 発達とともに特性/次元を分化させ, 最終的に小学生高学年頃に成人同様ビッグ・ファイブ概念を獲得する, という発達モデルが示唆された。