これまでの内発的動機づけ研究では, 自律性と自己目的性という2軸の概念化を平行と見なしがちであったが, 近年はそれを区別して扱うべきとの指摘がなされていた。そこで, 教員養成課程における教職必修科目「生徒指導」の受講生204名を対象に, 自我同一性, 達成動機, 職業レディネスを自律性の指標として, 正準相関分析により自律的な学習動機づけの様相を検討した。教職志望程度により2群に分けて検討したところ, 第1正準相関係数が自律性を表すものとなり, 教職を第一志望とする群では, 授業内容の職業実践にとっての有用性 (実践的利用価値), 授業を通しての自己成長 (私的獲得価値), 就職試験にとっての有用性 (制度的利用価値) が相対的に高い正準構造係数を示した。従来はその手段的な性質から外発的動機づけに位置づけられていた利用価値が自律的な学習動機づけ像の中核を成している。一方, 教職志望消極群では, 学習内容のおもしろさ (興味価値) と私的獲得価値の構造係数が高かった。したがって, 学習者の進路目標と学習内容との関係性により, 自律的な学習動機づけ像が異なることが確認され, 望ましい動機づけを固定的に捉えることの危険性が示唆された。