本研究は, 中学2年生男児1名に対して行われた説明文読解の個別学習指導の事例において,「相互説明」という指導枠組みを提案し, その有効性および適用可能性について検討したものである。この相互説明という指導枠組みにおいては,「課題遂行役」「モニター役」「評価役」の3つの役割が設けられる。そして, 本来1人の読み手の中で行われる内的な活動を, 課題に直接的に関わる「対象レベル」の活動と, その活動を評価・吟味する「メタレベル」の活動に分け, それぞれを「課題遂行役」と「モニター役」に分担させる。各役割にある2名がやりとりをする中で, それぞれの活動が表す内的な処理について理解するとともに, やりとりの中で生じてくるメタ認知的モニタリングの働きについて理解することを目的としている。本研究で示した指導実践では, 指導者の1名と学習者が役割を交替しながらやりとりし, 別の指導者が「評価役」としてやりとり全体の客観的な評価とフィードバックを行った。指導の結果, より要点に注目し, 構造に目を向けられるようになるという点において, 読解のパフォーマンスが向上したことが, 学習者の要約の分析から示された。