本研究は, 小学校3年生と6年生689名を対象とし, ある対象がどの人にとっても必ずしも同じ心理的機能を持つものではないという仮定に基づき, 絵画愛情関係テスト (PART) を用いて対人関係の枠組みを測定した上で心理的適応との関係を以下の2点について検討した。(1) 小学生の対人関係の枠組みで, 母親が優勢な母親型と友だちが優勢な友だち型とでは, 両タイプとも支えとなる枠組みを持つために心理的適応には差がないであろう。(2) しかし, 対人関係に関心を持たない, あるいは, 対人的交渉の相手が豊かでない小学生 (Lone-wolf型) では, 心理的適応に困難があるであろう。心理的適応度の測定には, 孤独感, 自尊心, 自己効力感の3種の測定具が用いられた。その結果, 対人関係の枠組みの中で相対的に母親が優勢であっても友だちが優勢であっても, 誰かとの関係がありさえすれば一般的な適応には差がないが, 具体的には対象を挙げないLone-wolf型の子どもは適応得点が低いことが明らかとなった。