本研究は「生殖性」の発達と自己概念との関連性について, 一般成人390人 (M/143, F/247) と成人患者 41人 (M/23, F/18) を対象者として (1) 成人期3段階における生殖性の発達,(2) 中年期の自己概念の因子構造の分析,(3)「生殖性/停滞」の発達要因と自己概念の検討の3つの目的から追究する。主な結果は, 1)「心理社会的バランス目録: IPB」(Domino & Affonso, 1990) を用いて一般成人を3年齢群と性による相違を検討したところ, 生殖性は年齢の順に得点が高くなった。2) 中年期の自己概念の因子構造に「達成因子」と「適応因子」および「社会性因子」の3つが抽出され, それらが検討された。3) 中年群と患者群を「GHQ」により精神健康状況を査定して, 2つの精神健康群 (「健康群」「リスク群・患者群」) に再分類し, 各群の生殖性の発達に影響を及ぼす要因を検討したところ, 健康群にはほぼ自己概念の「達成」「適応」の両因子がかかわり, 性差も見られたが, もう一方の停滞状況のリスク群・患者群の生殖性の発達には「適応」因子がかかわった。以上の結果から達成, 適応の自己概念は中年期の心理社会的発達と有意に関連していることが示唆された。