本研究は幼児を対象として, 2つの弁別課題が併行して訓練される併行弁別事態において, 過剰訓練をへて手掛りの群化 (cue-cluster) が形成されるか否かを, 複合刺激対を用いたテスト法で検討したものである。 被験者は80名の幼児 (5才児) であった。被験者は十字形-T字形弁別課題と正方形-台形弁別課題との2つの課題について, 学習規準 (各課題について5回連続正反応) に達するまで併行して弁別訓練を受けた。原学習の学習規準達成後, 原学習の成績を基にしてできるかぎり等質になるように標準訓練群 (OT-0), 過剰訓練6試行群 (OT-6), 過剰訓練12試行群 (OT-12), 過剰訓練18試行群 (OT-18), 過剰訓練24試行群 (OT-24)の5群に16名ずつ分けられた。原学習における正反応に対する強化は“あたりです”という言語的強化と, ブザー音とランプの点灯の非言語的強化との複合したものであった。各群の被験者は所定の過剰訓練終了後, 複合刺激対について6試行のテストを受けた。テスト試行においては, 被験者はいずれの複合刺激を選択しても原学習時の正反応と同様な強化を受けた。 主要な結果は次の通りであった。 (1), 過剰訓練量の増大にともなって, テストにおける正反応数は増大した。 (2), OT-24群のテストでの弁別遂行は, 過剰訓練期間中の弁別遂行と比べて全く損なわれなかったが, 他の4群のテストでの弁別遂行はそれに較べて損なわれた。 以上のような結果は, 併行弁別事態において, 過剰訓練が手掛りの群化を形成することと, 複合刺激対を用いたテストによる方法で, 手掛りの群化が過剰訓練をへて成立することが可能であることを示唆している。