従来の遊びの研究は, 3つの遊びの次元一遊びの型, 相手, やりとりの型一の個々からしか, 遊びへの接近を示してこなかった。本研究は, それら3つの次元を組合わせパターンとして, 同時的に用いることで, 幼児の遊びの構造を記述し, そこから, 今後の研究の仮説を導き出すことを目的として成された。この目的のため, 25人の幼稚園児の遊び場面を, 各人, 10秒毎, 10回, 8週続けて観察した。その結果,(1) 単一の次元からの結果は, 3 次元の特定の組合わせの反映にすぎず, 次元間の相互作用による例外のあること,(2) ひとりと相手のいる時とで, 遊びの型を切り換えていること,(3) しかし, 特定のパターンへの偏好性も個人差として存在すること, 及び,(4) 個人差に, 2つの方向性があることなどが, 見出された。 これらの結果から, 今後の仮説として, ひとりから相互的やりとりとそれに伴うそれぞれのレパートリーの拡がりの方向性, 及び, それとは異なる偏好性に基づく方向性の存在の2つが示された。また, 今後の課題として, これらの2つの仮説的傾向が, 発達的方向性を示しているのかの吟味の必要性が提起された。