本研究の目的は, 変形予想イメージの形成と対象を変形する行為, 知覚, 模倣との関係を明らかにし, 変形予想イメージの形成要因について発達的に検討することであった。 実験Iでは, 課題は提示された立体の展開図を予想し, 描画することであった。被験児は, 保育園年中児30名, 年長児30名の計60名であり, 各年齢ごとに10名ずつ3群に分けられた。実験手続は, 予備テスト-予備訓練-前テスト-訓練-後テストが用いられた。 訓練条件は, a) 展開群; 被験児が立体を展開する。b) 観察群; 実験者が立体を展開し, 被験児はそれを観察する。c) 結果提示群; 被験児が立体と展開図との間の関係について, 説明をうける, の3群を設定した。 その結果は以下のとおりである。 (1) 結果提示群では, 年中児, 年長児ともに訓練の効果が認められなかった。 (2) 観察群では, 年中児では訓練効果が認められなかったが, 年長児で訓練効果がみられた。 (3) 展開群では, 年中児・年長児ともに訓練効果がみられた。 実験IIでは, 課題は提示された立体の展開図を予想し, 型紙を用いて構成することであった。被験児は, 保育園年長児40名であり. 10名ずつ4群に分けられた。実験手続は,. 予備訓練-前テスト-訓練-後テスト-転移テストが用いられた。 訓練条件は, a) 模倣動作群; 立体の展開過程を模倣する。b) 積極的観察群; 立体の辺を指でなぞった後で, 立体の展開過程を観察する。c) 展開群; 立体を展開する。d) 展開図構成群; 立体の展開図を構成する。の4群が設定された。 主な結果は次のとおりである。 (1) 展開図構成群では: 訓練効果がみられなかった。 (2) 展開群および積極的観察群では, 訓練効果は有意であったが, しかしり完全な変形予想イメージは形成されなかった。 (3) 模倣動作群では, 訓練効果は有意であり, 完全な変形予想イメージが形成された。 以上のことから, 幼児において, 変形予想イメージを形成することは可能であり, 模倣動作によって形成が促進されると考えられた。