本研究は, 小学校における校長のリーダーシップ行動を測定する尺度を作成し, その測定尺度の妥当性を吟味しようとしたものである。 福岡市内の小学校21校の校長のリーダーシップ行動を 463名の教師によって評定した。一方, リーダーシップの効果性を測定するために, 教職員の仕事意欲, 職員間連帯性, 職員会議評価, 校内研修評価等に関する教師自らの認知反応を求めた。校長のリーダーシップ測定項目は, 因子分析の結果に基づいて選定した。校長のリーダーシップ類型は, リーダーシップP-M論に基づいて行った。主なる結果は, 次の通りであった。 (1) 校長のリーダーシップ55項目の因子分析の結果, 第1因子として「集団維持の因子」, 第2因子として「目標達成の因子」の2つの因子が見出された。 (2) 因子分析の結果などを参考にしながら, リーダーシップP (目標達成行動) 項目として10項目, リーダーシップM (集団維持行動) 項目として10項目計20項目をリーダーシップ頃目として選択した。 (3) 教職員のモラールに関する34項目の因子分析の結果, 第1因子として「職員間連帯性の因子」, 第2因子として「仕事意欲の因子」, 第3因子として「給与満足の因子」, 第4因子として「仕事に対するストレスの因子」, 第5因子として「校内研修評価の因子」, 第6因子として「職員会議評価の因子」, 第7因子として「教育に対する研究意欲の因子」, 第8因子として「学校への一体感の因子」の8つの因子が見出された。 (4) P, M両項目の平均値に基づいて, 各校長のリーダーシップをPM型 (目標達成, 集団維持ともに強い型), P型 (目標達成に強く, 集団維持に弱い型), M型 (目標達成に弱く, 集団維持に強い型), pm型 (目標達成, 集団維持ともに弱い型) の4類型に分けた。 (5) 教員集団の効果性を測定する変数としての職員間連帯性, 給与満足, 校内研修評価, 職員会議評価, 教育に対する研究意欲, 学校への一体感要因について, PM 型の校長のリーダーシップ効果性は他の3類型よりも有意に優れていた。しかし, 仕事意欲, 仕事に対するストレス要因について, 校長のリーダーシップ4類型に有意な差は見出されなかった。