従来の工業的技能に関する因子分析的研究の手続における問題点を検討し, 機械加工の技能遂行能力を因子論的に解明することを目的とする。被験者は職業訓練校機械科 (旋盤専攻) 訓練生 (2年生) 366名とした。テスト変数として技術的知識領域34, 技能領域11, 適性領域 9の54変数を設定し, 訓練修了時に実施した。得られた結果を解析I, IIによって検討する。 解析I:結果の相関行列から因子分析し, 更にWPG 法と再配置法の併用によってクラスター分析を行い, 能力の階層構造を求める。 解析II:作業段取り2変数を技術的知識領域, 技能領域のそれぞれに加えた場合と加えない場合の因子分析結果の構造的差違を検討する。更に両グループ間の正準相関分析によって, 介在する内在的因子の確認を行う。 この結果, 次の諸点が見出された。 1. 機械科訓練生の能力因子は技術理論因子, 作業管理因子, 知覚運動因子, 総合的製品加工因子, 面仕上げ因子で, 従来, 抽出されていた技術的知識と技能の両者に負荷する因子は見出されない。本研究において見出されたユニークな因子は作業管理因子と総合的製品加工因子である。また, 知覚運動因子は, 適性領域以外の変数とは独立した単一の因子として抽出された。 2. 技術的知識の構造は「基礎的・原理的内容」と作業に関連した「実践的内容」とに分化していることが明らかになった。 3. 知覚運動クラスターに測定技能が属し, 特に書記的知覚と性質の近い能力であるととが判明した。 4. 作業段取りに関する能力が技術的知識と実技能力との間に介在し, 両方に帰属性をもつ能力として位置づけられることが立証された。