本研究の目的は, 両親のリーダ―シップ行動認知に関する発達的変化が,(1) リーダーシップ機能の面においても,(2) 理想-現実次元においても異なるだろうということを調査することであった。 対象は, 幼稚園児, 小2, 小4, 小6, 中2, 高2, 母親である。 結果としては; (1) 発達的変化のパターンは, P機能とM機能では, 理想次元では, はっきり異なっているが, 現実次元では, 父親に対しては異なっておらず, 母親に対して異なったパターンを示した。 (2) 理想次元と現実次元の発達的変化は, 父親に対する M機能認知に対してのみ異なったパターンを示し, 母親に対する, P, M機能認知, 父親に対するP機能認知には異なったパターンを示さなかった。 (3) 理想次元と現実次元のズレは, 両親のM機能認知について理想が現実よりも有意に高く, P機能認知については, 父親に対してズレがなく, 母親に対しては, 現実が理想より有意に高かった。 (4) ズレの発達的変化は, 父親のM機能認知と母親のP機能認知において起っていたが, その生起のプロセスは異なっていた。 これらの結果から, 子どもは発達とともに, 親に対する理想と現実の間にズレを感じるようになっていく, と一般的に言われているが, 父親と母親に対してとでは, そのプロセスに違いがあることがわかった。 つまり, 子どもにとっての「父親不在・母親支配」は, 子どもの発達段階に関係なく起っており, そのために, 父親との間には情緒的相互作用を現実よりより多くしてほしいということからズレを, 母親との間には しつけ・訓練をもっと弱くしてほしいということからズレを認知していることが明らかになった。