本研究の目的は, 5, 6歳児における社会的比較と自己評価の変動の関連を明らかにすること, および自己評価維持モデルを参考に, 自己評価の変動にかかわる要因を検討することであった。調査1では, 5, 6歳児63名が運動, 芸術, 知的, 社会的の4領域で, 自己, 理想の友人, 実際の友人の能力評価を行った。調査2では, 5, 6歳児67名が運動, 芸術の2領域で, 一番好きな活動と嫌いな活動について自己と実際の友人の能力評価を行い, そのときの感情を回答した。また, 自己と見知らぬ他児との能力比較に伴う感情を回答した。その結果, 以下のことが示された。1)5, 6歳児でも社会的比較を行い, それに応じて自己評価の変動が見られる。2)自己の能力評価がその活動に対する好き嫌いの程度と強く結び付き, 領域/活動ごとに自己と友人の相対的な能力評価を変える。3)友人より自己の能力を低く評価する場合でも, 否定的な感情が喚起せず, むしろ友人の高い能力を反映した肯定的な感情を報告する。