幼児の心の理論の発達には, 母親の言語の用い方が関連していることが検討されてきたが, 心的状態語の使用量との関連について見ているものが主流であり, また母子相互交渉の観察も場面が統一されていないなどの問題があった。本研究では, 5, 6歳児とその母親を対象に, 2種類の母子相互交渉場面を設定して, 母親の言語の用い方の特徴を捉え, これと子どもの心の理論の成績との関連について検討した。その結果, 子どもの言語能力や母親の教育年数とは独立して, (1) 母親が子ども自身や他者の心について考えさせるような言語を用いるほど, 子どもの心の理論課題の成績が良いこと, (2) 母親が子どもの日常の経験, 知識, 考え方を考慮した言語を用いるほど, 子どもの心の理論課題の成績がよいこと, がわかった。