本研究の目的は, 友人から冗談を言われて怒りを感じる場面での聞き手の反応を規定する要因を, パーソナリティ要因(拒否に対する感受性)と状況要因(話し手との親密さ,冗談に対する周囲の友人の反応)の観点から検討することである。聞き手の反応には「迎合的反応」, 「回避的反応」, 「感情表出反応」が含まれる。本研究では場面想定法を使用し, 大学生417名(男性169名, 女性247名, 性別不明1名)を4つの状況(たとえば, 「親友が話し手であり, 周囲の友人は冗談に対して笑っている」)のうちのひとつに割り当て, その状況において冗談に対してどのように反応するかを回答するよう求めた。分散分析の結果, 拒否に対する感受性が高い回答者は, 親友が話し手で, かつ周囲の友人が笑っていない状況において, 迎合的な反応を行わないと評定することが示された。しかしながら, 拒否に対する感受性が高い回答者は, 周囲の友人が笑っている場合は, 迎合的反応をする頻度を高く見積もっている。この結果は, 拒否に対する感受性が高い回答者は, 状況によって拒否される可能性を考慮し, 自己防衛的な反応を選択していることを示唆している。