日本語で, 有声音で始まる擬音語と無声音で始まる擬音語がペアになっている場合, 前者は, より大きな対象から発せられるより大きな音を, 後者は, より小さな対象から発せられるより小さな音をあらわす。日本語話者のおとなは, 実在の擬音語ペアだけでなく, 初めて耳にする擬音語ペアにも, このルールを適用し意味を理解しようとする。本研究では, 日本語話者の子どもが, この“感覚”を, いつ, どのようにして備えるようになっていくのかについて, 書記体系であるひらがな——ひらがなでは, 有声音と無声音の対応は濁点の有無によって系統的に標示される——の影響に注目しつつ検討した。その結果, 4歳児は既に, 実在の擬音語だけでなく, 新規な擬音語も, このルールを適用して理解しようとするようになっていることが見いだされた。また, 濁音文字が読める子どもは, 読めない子どもより積極的に, このルールを新規な擬音語ペアに適用していた。このように, ひらがなについての知識は, 子どもが, 有声音と無声音に関する意味づけを, 実在の擬音語だけでなく新規な擬音語にも適用可能なものへと一般化していく過程で, 一定の役割を演じている可能性が示唆された。