本研究の目的は, 児童の聴くという行為および学習に対する教師のリヴォイシングの影響を明らかにすることである。小学5年生2学級の社会科を対象に, 直後再生課題と異なるタイプの問題からなる内容理解テストを行った。結果, 話し言葉ならびに板書を伴う教師のリヴォイシングが, 児童に発言を自分自身と結びつけて聴く機会を与え, 聴くという行為を支援していることが明らかとなった。さらに教師のリヴォイシングの違いが, 話し合いの中で1)何を, 2)どのように聴くかという, 聴くという行為の2つの側面に影響を与え, 児童の内容理解の仕方にも影響することが明らかとなった。リヴォイシングにより発言児が主題に沿って位置づけられる学級では, 児童が話し合いの流れを捉えて聴いており, 授業内容を授業の文脈に沿って統合的に理解していた。一方教師のリヴォイシングが位置づけの機能を持たないもう一方の学級では, リヴォイシングにより個々の発言内容が明確化されており, 児童は発言の「著者性」を維持したまま自らの言葉で捉えて発言を聴いていた。テストにおいても後者の学級の児童は授業内容を自らの言葉で積極的に捉え直せるように理解していた。