左一側性病変により連合型視覚失認を生じ, 経過中に視覚失語に移行した例について検討した。症例は, 65 歳の右利き男性で, 頭部 MRI で, 脳梁膨大部を含む左後頭側頭葉内側部に病変を認めた。初回評価時, 触覚性呼称, 聴覚性呼称, 言語性定義による呼称は良好であったが, 視覚性呼称は不良であった。また, 形態知覚は保たれていたが意味に関する課題は不良であったことから, 連合型視覚失認と考えられた。初回評価 2 ヵ月後, 視覚性呼称は不良であったが, 意味に関連する課題は改善し, 視覚失語に移行したと判断した。視覚失語への移行は, 右半球の意味記憶の機能の活性によると考えられたが, 右半球処理による視覚性認知は, 左半球で処理される言語性認知ほど詳細ではなく単純である可能性が示唆された。視覚失語において, 視覚性呈示により物品の概念が想起されても視覚性呼称に至らないのは, 右半球処理によって想起される概念が浅く脆弱なためではないかと考えられた。