もの忘れ外来を受診した 56 名 (AD25 名,MCI 18 名,健常群 13 名,平均年齢 77.1 歳) を対象に,日本版 RBMT の「用件」の遅延再生課題のおける展望的記憶の障害の有無と認知症の有無との関連,および展望的記憶の障害過程を検討した。その結果,AD では存在想起・内容想起ともに障害された割合が高く,記憶,前頭葉機能,視覚情報処理などさまざまな認知機能の低下により「意図の符号化」「意図の保持」「意図の認識」「意図から遂行内容の想起」の過程が障害され, MCI でも存在想起・内容想起とも障害され,記憶,前頭葉機能の低下により「意図の符号化」「意図の認識」「意図から遂行内容の想起」の過程が障害された。健常群でも存在想起のみが障害され,前頭葉機能の低下により「意図の認識」の過程が障害されたことから,展望的記憶の障害の割合が対象群によって異なったことは,低下した認知機能の違いによる展望的記憶の障害プロセスの違いを反映すると考えられた。