高次脳機能障害に対する治療戦略は,原因疾患とその病態を充分に検討することから始まる。すなわち,その発現機序を理解した上で,治療戦略を考えていくべきである。正確な治療効果を検証するためには,高次脳機能障害の詳細な評価が必要である。高次脳機能障害の顕著な改善を期待できるものに外科的治療がある。慢性硬膜下血腫では穿頭洗浄術によって認知症に陥った患者を劇的に改善させる。閉塞性あるいは狭窄性血管病変を有する患者に対して,バイパスや血管形成などの血行再建術を行った場合,高次脳機能障害の改善がしばしばみられる。本稿では,高次脳機能障害を有する患者の診療にあたり,臨床現場で実践してきたいくつかのアプローチについて述べた。