本研究は,加齢による日本語助詞能力への影響を検討するため,助詞判断課題を用いて後期高齢者の助詞の理解·表出力を評価した。75 歳以上の後期高齢者6 名(平均年齢77.8 歳,教育歴12.1 年)を対象に,Mini-Mental State Examination(MMSE),Frontal Assessment Battery(FAB), 言語流暢性課題(WFT),日本語文法理解テスト(J.COSS),助詞判断課題を用いてさまざまな能力を評価した。その結果,MMSE から知的機能障害が疑われる対象者はほとんどいなかったが,助詞の理解·表出力は,FAB,WFT,J.COSS 同様に,加齢による低下が示された。そのため,これらの対象者に対して,助詞判断課題を用いた1 ヵ月間にわたるトレーニングを行った。トレーニング後,知的機能に変化は認められなかったが,J.COSS と助詞判断課題の成績はトレーニング前よりも有意に上昇し,文法能力が向上した。助詞判断課題はMMSE と有意な相関係数が示されていることから,助詞判断課題を用いたトレーニングは,後期高齢者の知的機能の維持と,文法能力を向上させる効果がみられる有効な方法である可能性が示唆された。