左被殻出血により軽度失語症および数の桁処理に顕著な障害を呈した症例を経験し, その障害特徴および発現機序について数処理過程におけるコード変換機能の観点から検討した。本例では, アラビア数字形式と, 数の日本語形式とのコード変換課題において, 桁がずれる誤りが頻繁にみられ, 個々の数字の処理との間に乖離を示したことから, 数の統語処理的側面が障害を受けた例と思われた。数の両形式間の変換処理には, 双方向ともに桁という空間的表象への定位が必要であり, 本症例の数の統語処理障害には, 内的な空間的表象の操作機能の低下が関係していると考えられた。