高次脳機能障害の際にみとめられる「認知過程」と「意識過程」に論及し,潜在認知,病態失認,脳梁離断における具体例をあげて両者が解離して出現する場合があることを示した。そして前者を,「脳の活動に伴う内的心理過程をいったん外在化してそれを一定の情報処理過程としてとらえる試み」ととらえ,後者を「脳の活動に伴って個体に生じている,主体から出発せざるをえない性質を帯びた自覚的過程」とみなし,後者は,自覚的かつ自己言及的である点において前者と区別されるべきであることを指摘した。そして,両者の独自性を尊重しつつ,両者を統合的に把握することこそが「臨床の視点」と考えられることを述べた。