この研究の目的は,サラブレッドの最大に近い歩行速度での速度と完歩数,完歩幅および隣接する2蹄跡間の歩幅である隣接歩幅(以後SLと略す)の関係を知るこ,とであった。実験は競走馬としてトレーニング中の3歳のサラブレッド3頭を用いた。各馬は,そのウマにとってほぼ最大の速度を含む,6種類の異なる速度で6回走行した。完歩幅とSLは走行後の地面の蹄跡から測定し,完歩数は前肢に装着した加速度計の着地時の波形から測定した。完歩幅と完歩数の平均分散係数はそれぞれ2.1%と1.6%であったので,完歩幅や完歩数といった歩行上の特性はそれぞれのウマ個体で,駈歩と襲歩においてばらつきが小さく安定していると考えられた。完歩幅と完歩数は速度の上昇に従いほぼ直線的に増加した。しかし,速い速度範囲で完歩幅の増加率は減少する傾向を,逆に完歩数の増加率は増加する傾向を示した。また,4つのSLの比較では, Airborne SLとMid SLはFore SLとHind SLに比較して,速度の上昇に伴いはるかに大きく増加した。速い速度範囲で, Airbone SLはレベリングオフを示したのに対して, Mid SLは増加率の増加を示した。速い速度範囲におけるAirborne SLのレベリングオフは前肢の制動力が大きくなった結果生じ,,Mid SLの増加率の増加は後肢の推進力が大きくなった結果生じたのではないかと考えられた。