食品加工プロセスにおける赤外線利用に関して, 放射伝熱学と分光学的な側面から総合的に論述した.赤外線の熱的操作への応用として, 食品モデルの乾燥と殺菌に関する研究を行った.食品モデルの赤外線乾燥特性に及ぼす因子に着目し, 赤外線乾燥の定量的評価には試料の赤外域における拡散分光情報の理解が重要であることが示された.また, 細菌の赤外線殺菌は従来法加熱殺菌よりも効果的であり, その効果は試料表面近傍における赤外線エネルギの吸収とバルク温度に起因することが示唆された.そこで, 赤外分光法による食品の定性・定量解析に関する研究を行った.それらの成果に応用することにより, 懸濁細胞の動的糖代謝挙動の把握, イオン解離性代謝物質が関与する酵素反応過程のモニタリング, および食味ロボットの開発が可能となった.以上より, これらの研究成果は, 食品加工プロセスにおける赤外線利用に関する重要な指針となりうるものである.