果実類の味の指標である糖および酸を同時に測定する手法として, 簡便性や迅速性が高く, 非破壊測定も可能な近赤外分光法の応用が進んできた.近赤外分光法による果実の測定における問題点として, 品種・産地・栽培時期・収穫年次・熟度の違い, 試料温度の変動, 果実成分の不均一性などが測定精度に影響することがあげられ, それぞれ対応策が研究されてきた.次に, 検量線作成にあたっては, 将来的に測定する試料がもつ様々な物理化学的変動を含むような試料を用いることが必要である.検量線に用いる主要な波長は, 目的成分の吸収バンドにあるとともに, 目的成分の組成変動や他成分の濃度変動に対して吸光度が安定的であることが望まれる.また, 使用目的に必要な測定精度を明らかにし, 近赤外分光法の実用性を検討することが重要である.味の識別が可能な糖および酸の濃度差を官能検査により明らかにすれば, 測定精度の目標を設定する場合の目安になると考えられる.