30%(w/w)粳米澱粉ゲルの静的粘弾性パラメータの速度論的処理を基に,澱粉老化(硬化)に及ぼす乳化剤の影響を検討した.脂肪酸(C8-C18)組成の異なるモノシュガーエステルの硬化抑制能は脂肪酸鎖長の増大につれて大となり,パルミチン酸エステルで最大となった.しかし,脂肪酸がステアリン酸:パルミチン酸=70:30の混合で親水基の異なる各種食用乳化剤の硬化抑制能は,アミロース複合体形成指数とは比例せず,HLB値に強く影響された.HLB値の異なるシュガーエステルでの検討の結果,HLBが11のものが最良の硬化抑制効果を示した.これらの結果は,澱粉の老化における乳化剤の硬化抑制効果は,疎水部(脂肪酸)のアミロースあるいはアミロペクチンとの複合体形成性と,親水部の水との水和の複合的な作用によって引き起こされるということを示唆している.