リノール酸などの不飽和脂肪酸から構成される酵素分解率99%の大豆リゾリン脂質(SLPL-99)の小麦澱粉との複合体形成能(SCI)は,ステアリン酸モノグリセリドと同等であった.ブラベンダーアミログラフで調製したSLPL-99添加の小麦澱粉ゲルの特性を,DSC,レオメーター,偏光顕微鏡,電子顕微鏡で測定した.SLPL-99添加の小麦澱粉ゲルは,DSC測定から複合体が形成されていることがわかった.酵素分解率の異なる大豆リゾリン脂質(SLPL)を添加した小麦澱粉ゲルの破断強度と応力は,その分解率が増加するに従って小麦澱粉ゲルよりも小さくなった.また酵素分解率89%のSLPLを添加した小麦澱粉ゲルのレオロジー特性の経時変化は,その添加量が増加するに従って小さくなった.アミログラフにおける小麦澱粉の糊化温度は,SLPLの分解率と添加量が増加するに従って高くなった.SLPLを添加した小麦澱粉ゲルの保存中(5℃)のレオロジー特性の経時変化が小さいこととその小麦澱粉の糊化温度の上昇から,SLPLと小麦澱粉の複合体が形成されていることが示唆された.これらの結果から,SLPLは,小麦澱粉との複合体形成により,澱粉食品の優れた品質改良剤となることがわかった.