バナナ果肉には,その熟成度にかかわらず,可溶性型および細胞壁結合型酸性α-グルコシダーゼ(SAAG,BAAG)が存在している.同一の房の黄熟バナナから,塩を含まない中性緩衝液でSAAGを,残渣から1MNaClを含む同緩衝液でBAAGを抽出し,それぞれCon A-Sepharose, Sephadex G-150ゲル濾過クロマトグラフィーで732倍,264倍に精製した.分子量はSAAGが70,000,BAAGは90,000であった.両者は典型的なマルターゼであり,マルトオリゴ糖(G2-G7)は基質になるが,イソマルトース,スクロース,トレハロース,澱粉,グリコーゲン,プルランは分解されなかった.マルトースに対するマルトオリゴ糖(G5-G7)のVmax/Km比(みかけの反応効率)は,SAAGでは89-112%であったのに対し,BAAGでは14-52%であった.未熟バナナでは細胞壁に適当な基質が見当たらないので,BAAGの生理学的役割は不明だが,追熟したバナナでは,細胞壁やアミロプラスト膜の脆弱化により,BAAGは澱粉およびその代謝中間産物にアクセスできる可能性があり,アミラーゼやSAAGとともに澱粉分解に関しているかもしれない.