われわれが谷津干潟土壌より単離した Vibrio parahaemolyticus KN1699株は,キチン分解によりヘテロ二糖 [β- N -アセチル- D -グルコサミニル-(1,4)- D -グルコサミン(GlcNAc-GlcN)] を生成するユニークな分泌性のキチン分解酵素系を有している.GlcNAc-GlcNの生成メカニズムを調べたところ,本ヘテロ二糖は,GHファミリー18キチナーゼ( Pa -Chi)の作用によるキチンからジ- N -アセチルキトビオース [(GlcNAc)2] の生成,続いてCEファミリー4キチンオリゴ糖デアセチラーゼ( Pa -COD)の作用による(GlcNAc)2の還元性末端側の糖の脱アセチル化により生成することを明らかにした.二つの酵素を利用してキチンから(GlcNAc)2とGlcNAc-GlcNを量産するために,大腸菌によるリコンビント酵素の大量調製について検討した.KN1699株のゲノムから分泌シグナル配列を含む各ORFのクローニングを行い,プラスミドを作製した後,大腸菌に導入した.これを用いて各リコンビナント酵素( Pa -rChi, Pa -rCOD)の発現を行った結果,各酵素を大量に発現させ,さらに培養液中に効率的に分泌させることに成功した.続いて,これら2種のリコンビナント酵素を用いたオリゴ糖生産について検討を行った.その結果, Pa -rChi分泌組換え大腸菌を2%キチン含有培地で培養することで,粉末キチンから(GlcNAc)2を収率60%で生産することに成功した.さらに, Pa -rCOD分泌組換え大腸菌から調製した粗酵素溶液を用いて,(GlcNAc)2からGlcNAc-GlcNを高収率で生産することができた.今後は,生産したGlcNAc-GlcNの機能性について解析する予定である.