5品種の馬鈴薯を4℃で貯蔵し, 単離された澱粉の物理化学特性の変化から, 澱粉の品質に及ぼす低温貯蔵の影響について検討した. 平均粒径とリン含量は, 貯蔵とともにほとんどの品種で減少傾向がみられ, 馬鈴薯を長期間低温で貯蔵することにより, 澱粉粒が酵素による分解を受け小粒化することが示唆された. しかし, 青価は低温貯蔵中に増加することから, 澱粉粒外側のアミロペクチンが糖化分解を受けやすいと思考された. 膨潤度および溶解度は, リン含量や, アミロース/アミロペクチン含量比などの影響が大きいと推察されたが, 変動幅が小さく貯蔵による一定の傾向は認められなかった. RVAによる粘度特性に関して, インカレッドとインカのめざめは, 他の品種よりも高い粘度上昇温度を示した. また, 低温貯蔵により, 品種間の粘度上昇温度の差が, 僅かに小さくなる傾向がみられた. DSCによる熱特性値は, インカレッドが高温域に, 男爵が低温域にあった. 低温貯蔵中に, 糊化エンタルピーと糊化終了温度の微増と, 糊化ピーク温度の僅かな減少が認められた.