加工食品に存在するアクリルアミド (AA) は還元糖とアスパラギンとのMaillard反応によって生成するとされているが, AA生成に及ぼす糖質の影響はまだ7種類しか調べられていなかったため, 単糖や二糖, そして糖アルコールなど22種類の糖質を用いた食品モデルによる検討を行った. 糖質としてグルコースを用いた実験では加熱時間15分でAA量が最大値を示し, 30分でその3分の1以下となる挙動が認められた. この挙動はpH3-8.5で変化なく, また単糖や二糖を通じても同じであった. AA量はアルドースとケトースの違いに大きく影響され, 還元性の有無による変化は比較的小さいものであった. 糖アルコールからの生成量はグルコースの場合と比較して10分の1ほどと少ないものの, いずれの試料からもAAが確認された. また, デンプン, シクロデキストリンを用いた場合は, 15分過ぎからAA量が増加し始め, 約50分後にグルコースの最大値とほぼ同じ水準となり, その後, 50分間以上高いAA値を持続するという挙動を示した. 本研究で得られた知見は還元糖とAsnとのMaillard反応では説明できない点がいくつかあるため, グルコースの実験系における糖質とアスパラギンの経時変化も測定した. その結果, 糖質の分解生成物が関与するAA生成経路の存在が示唆された.